ネットの悪口に鉄拳制裁!慰謝料ってもらえるの?
近年、インターネット上で有名人に対する度を越えた批判や、誹謗中傷に対して法的な措置を取って民事裁判になっている事例が多く見受けられるようになりました。
ネットが発達し、誰もがスマホを持つようになった結果、SNSや掲示板サイトで活発なやりとりがされるようになりましたが、その影響でユーザー間でのいさかいも度々発生し、それが法的な問題にまで発展することもあります。
このような民事裁判はテレビ番組や映画、創作物の中でも多く語られており、広く一般的に「誹謗中傷で慰謝料が発生する場合がある」という認識はあると思います。
しかし、本当に慰謝料が取れるのでしょうか。
最近ではニュースなどでも「インターネット記事に対しての民事裁判が始まった」という話題がよくあがります。ところがそれに比べると「民事裁判で勝って、慰謝料が発生しました」というような話題はほとんど目にしません。
それでは誹謗中傷で民事裁判を起こしてもあまり意味はないのでしょうか。本記事では誹謗中傷に対する民事裁判の事例から、慰謝料をもらえるのかどうか考えていきます。
「お金払ってばっかり」な風評被害を取り巻く被害者の苦悩
近年では掲示板サイトやSNSで、匿名であることを悪用した行き過ぎた批判を行なうユーザーも多く、社会問題化しています。
当社でも、「誹謗中傷をしている人物を特定したい」という問い合わせを多く頂いており、その深刻さを窺わせています。
そんな大きな問題となり始めているインターネットの民事的な問題ですが、大きな問題が1つあります。
それは、基本的には「被害者が対策費用を負担する必要がある」ということです。
加害者が対策費用を負担できないことには理由があります。
インターネットの問題というのは、「行き過ぎた批判」や「個人情報が流出」という内容を対策します。削除を担当する弁護士は「本当に実在する人か」、ひいては「対策する必要があるか」という点を確認する必要があります。
その理由が理に適っている場合、弁護士と被害者は契約して対策を開始しますが、この「対策する必要性」というのは、「自分の権利が侵害されてしまったから」という理由以外はほとんど成立しません。
加害者側から対策を依頼したくても「その書き込みを自分がやった証拠」というのを提示できません。特に掲示板サイトではほとんどの弁護士ができないと判断せざるをえません。
投稿した人物の証明として有効なのが「ログ」と呼ばれる一般的には見えない情報です。弁護士はそれを用いて発信者を特定作業を行ないますが、このログについても開示するための理由が必要になり、加害者からではその理由が非常に弱くなってしまいます。
そのような背景があり、被害者からでしか弁護士と契約ができないインターネット風評被害。そういうときの対処法として有効なのが、慰謝料の請求です。
そもそもネットの悪口に関する民事裁判は勝てるのか?
前述のとおり、ネット上のニュースでも近年では風評被害に対する慰謝料請求の裁判にまつわる記事が取り上げられるようになってきましたが、それに対してその結末が語られることは多くありません。
それでは慰謝料請求の裁判をしても勝てないのでしょうか。
結論から伝えると慰謝料請求の裁判で勝った事例は多くあります。
投稿者情報開示を命令、東京地裁 春名風花さん母の名誉を侵害 | 共同通信
https://this.kiji.is/562900364535530593
投稿者の情報開示を命じる、大阪 京アニ事件でNHK中傷 | 共同通信
https://this.kiji.is/574784161196409953
上記の内容のように、インターネット上で個人や法人の権利を侵害する投稿を行った場合、法的に損害が認められ、賠償請求が発生する場合があります。
慰謝料の請求は法人や有名人だから有利に働く、というものではありません。一般的な職に就いている個人も権利が侵害されたと認められれば慰謝料の請求権を得ることは可能です。
掲示板で誹謗中傷する人たちを片っ端から開示請求し内容証明を送りまくっていたら「あいつはガチで訴えるから話題出すな」と避けられるようになった話 – Togetter
https://togetter.com/li/1426846
こちらで紹介した内容のように、適切な手順を踏みさえすればどのような立場でも慰謝料を請求することは可能です。
ネットの悪口に慰謝料1億円!は可能なのか|2つのポイント
慰謝料の請求金額は決まりはありません。それでは笑い話などで稀にある「慰謝料1億円よこせ!」というような文言は実際にあり得るのでしょうか。
慰謝料請求を行なう上で重要なポイントが2つあります。
1つ目は裁判所と弁護士が調整する点です。
一般的には慰謝料が超高額になるようなことはありません。というのも、弁護士と相談したうえで、加害者が払えるような金額をあらかじめ選定するからです。
そのうえで、裁判で当該の書き込みに対する慰謝料の金額に妥当性があるのかを検討します。その検討している上で妥当性のある金額が慰謝料として決定づけられ、加害者に処分が下されるため、被害者が欲しい金額が必ず保証されるわけではありません。
2つ目は加害者の存在です。加害者の正体は裁判を経て慰謝料を請求するときようやく判明します。
加害者も社会的に生活している人です。働いて自分で生活していますが、必ずしも貯金や他の財産があるわけではありません。
そのようなときに慰謝料として高額な支払いを請求されるため、支払い能力が求められます。働いていれば工面する手だてもありますが、働いていない場合も考えられます。そのような人物にも支払いを交渉することも可能ですが、非常に難航することが多いです。
慰謝料は何も必ず金銭である必要ありませんので、貯金がその慰謝料の金額に満たされていなくても、加害者が保有している他のものを差し押さえることは可能です。
差し押さえられるのは不動産(土地、建物)、動産(宝飾品、美術品、有価証券など)、債権(給与、預貯金)など多岐に渡りますが、それでも自分が請求した慰謝料に届かない場合もあります。
そのため、自分が求めた慰謝料に届かない可能性があるのは十分に留意するべきです。
まとめ
有名人や、批判されるべきことをしてしまった人でも、名誉を傷つけられたことに対してそれを保護する訴えをしてはいけない、ということは全くありません。
名誉を守ることはその人に与えられた権利なので、そのような現場に晒されてしまったときは適切な対処を行なうように心がけましょう。
慰謝料の請求は決して簡単な手続きではありませんが、民事裁判では被害者が加害者に対して反撃できる1つの方法です。
インターネットが発達したことにより、炎上するケースが非常に多くなりました。
炎上した内容に対して批判すること自体は問題ではありませんが、過剰な批判に対して適切な防衛策を取ることは被害者の権利です。
炎上しないことが何よりも重要なことですが、批判に晒されてしまったときの適切な対処も覚えておきましょう。
2020.01.28
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